今回のラボは 文系、理系の教授陣、競技の指導者、先生ばかりの会になった。面白かったのは、競技の指導でしている表現方法が理系の教授に伝わらないこと。指導者の感覚的な表現が生徒に伝わらない、ということはよくある話。
口だけでは伝わらない、 具体的かつ実技での説明が大切。
さて、具体的に「腰を入れる」とはどのようなことなのか?
という、お題に辿り着いた。腰を入れると動きやすい、力を出しやすい、ということは、よくいわれるが、わからない、できない人にとっては手掛かりがほしい。それで、下位腰椎から仙骨部の多裂筋コントロールを紹介した。
▲骨格筋の形と触察法(大峰閣) 著:河上敬介、磯貝薫
多裂筋
【起始】第4〜第7頸椎の下関節突起、全胸椎の横突起、全腰椎の乳様突起と副突起、仙骨の後面
【停止】軸椎以下の全椎骨の棘突起
多裂筋を確認する場合は下位腰椎、仙骨部を触察できます。上位腰椎の高さでは、多裂筋を触知するのは難しいが、下位腰椎の高さでは多裂筋の筋腹は厚く、棘突起と最長筋の間から触知しやすい。また、仙骨後面で触知できる筋腹はすべて多裂筋です。
多裂筋のコントロールを試してみるとわかるが、意識が通らないし、仮に意識ができたとしても筋の収縮方向がわからない。腰を入れることができる人というのは、きわめて稀な腰の操作をしていることがわかる。 「腰を入れる」ということが、 わからない、できない人 の方が普通なのかもしれない。
手掛かりとはいえ、いきなり多裂筋をコントロールしようとしても無理。多裂筋に辿り着くまでには手足の末端から四肢、体幹の順を踏まなければならない。それは、体幹を保持できるだけの四肢に支持性がないと多裂筋に注目できない。要は四肢の実力が必要。その上で「胸郭と骨盤の位置」と「腹筋側と背筋側の筋」を調整する。腹筋側の筋の入力をリセットして書き換える。多裂筋をコントロールできない状態では腹筋側が主になるような強力な入力がされている。順としては腹をつくってから腰。
相当大変なことなので、多裂筋をコントロールできる人というのは、ごく限られてくるのではないのではないだろうか。しかし、これに挑戦してみることで面白いことがある。それは、丹田ということの雰囲気が何となく感じられるようになる。丹田は点ではないこと。感覚的な表現の難しさがあらためてわかる。
多裂筋は体幹の保持をするための要になる筋。股割りでもこの筋の収縮率が上がってくると、股関節をコントロールする精度も同時に上がってくる実感がある。股割りでも腰を入れることができる。腰が入った股割りができる人も稀ではあるが是非目指したいところ。
朝は晴天、名古屋からの参加者と青山で合流。午前はNHK青山「深部感覚」講座、昼は築地で趾から股関節講座、夜は月島で趾から股割り講座、終了後は懇親会、タイトなスケジュールだった。
深部感覚を研究されている医師の参加があった。研究論文を書かれる一方で、ご自身もトレーニングに打ち込むほどの本格的な専門家だ。深部感覚の情報は少ないのでなんともうれしいご縁に感謝!
午前に腕の深部感覚を入力した加減なのか、上位胸椎辺りが一皮むけたように軽い。さらに股関節回転講座では趾を入念に股関節をアプローチして体と動きを軽くした。
今回は牧神の蹄を使ったワークを中心に股関節をアプローチした。
大阪から参加した男性は、足指の感覚がない状態で接地していることに気づかないほど深部感覚の低下が著しかった。床に足指が接触する位置を覚えることによって、講座中盤から自分の足が自分の元へ戻ってくるかのように血色を帯び、講座修了時には接地感覚を取り戻していた。
本来、治療のリハビリでは機能回復訓練をおこなうものなのだが、急性期の外傷では機能回復訓練がおこなわれたとしても、慢性期の症状を呈するものに対しては除痛がほとんど。慢性期では機能回復訓練をしっかりおこなって深部感覚を取り戻すことが大切だと思う。
股割りは股関節をコントロールすることができるようになるためのトレーニング。股割りワークショップでは体の動きについてのイメージを整理して股関節のコントロールの妨げになるイメージを取り払う。そして、股関節が十分に機能する骨格位置を覚え、繰り返し動かす。
股関節は動きによって可動を拡大するが、動きによって可動を制限する。
動作の質の見極めが肝心!動作は体から起こり、姿勢に始まり姿勢に終わる。姿勢が崩れた状態で股関節を動かしたとしても動作の質が高まることはない。姿勢を維持できる範囲の動きが自分の実力。骨格の支持性を安定させることが大切。
姿勢は、安定していること、強度を備えていること、直ちに次の動作へ移ることができること、これらの3つのポイントをクリアしていること。ひとつでも欠けていたら股関節をコントロールすることができない。まずは、股割り姿勢を完成させる。
股割り動作では、股関節外旋外転から体幹を前屈していくときに恥骨結合、下腹の順に床に接触する。おでこや胸を床に接触することができたとしても恥骨結合、下腹が接触していなければ、腰の抜けた股割り動作でしかない。腰の入った姿勢で股関節のコントロールができる。これらの点を注意して股割りの練習をすることが大切。
ワークショップ終了後は虎の穴タイム!覆面カズスケさんが、はじめて股割りで「下腹」が床についたお祝い。おめでとうございます!
タイガーマスク先生がきてくださった!?タイガーマスク先生から直伝「タイガースクワット」!下半身の反射を磨く腰を入れたまま落下するスクワット。
次回は12月25日です。
股割りワークショップの後は、プライベートレッスン。上肢と下肢の外旋に作用する筋群が十分に力を発揮するために四肢と体幹の骨格位置を調節する。一見すると姿勢が綺麗にみえて骨格位置に問題がないように思っても、その支持性が薄く力を発揮できない場合が多い。支持性を高める工夫が必要。
いよいよ!股割りで床に恥骨結節、下腹がつく練習生を対象に股割り・360度開脚ロールオーバークラスを予定してます!