11月の構造動作トレーニング・東京教室のTakahiroラボは、肩関節の運動と筋肉の作用について検討、実習した。
まず、月刊ダンスビュウ12月号の中井理惠先生コラムが「姿勢(Posture)」ということで、姿勢という言葉の「身体の構え」と「心の構え」の両方の意味を備えた姿勢づくりについて検討した。構造動作トレーニングは、強く、安定し、いつでも動き出し可能な機能的な姿勢を目指す。機能的な姿勢を身につけるためには深部感覚(固有感覚)を敏感にしていかなければならないが、深部感覚が身体の無意識な感覚の流れであることから、苦戦している人が多い。
構造動作トレーニングで身体を整えている参加者の中で、瞑想をしなくても心を整えることができるようになった、という実体験の話があった。仕事や日常生活の中には様々なストレスがある。このストレスを溜めないために長年、瞑想をしてきたそうだが、身体を整え、動くことで、ストレスを振り払い心を整えることができるようになったという。ポイントは、心にアプローチしないことを念押しされた。
このところ私の周りでは、夫婦喧嘩、親子喧嘩などの争い、病気、仕事の悩みなどが蔓延している。これもコロナの影響があるのか、よくあることなのか、困ることは、それらの人たちの感情が私の中に流れ込んできて、胸が苦しくなることだ。これは私にとって身を蝕むようなストレスなので溜めてはいけないもの。私はストレスが溜まると、身体が鈍ったように感じる。そのようなときは、身体を整えてから山を歩く。時間があるときは、できるだけ長距離を歩き、時間がないときは短距離を歩く。そして、気分が乗らないときは歩かない。歩いているときは、自分の動きを観ている。時折、嫌な感情付きの映像が脳をよぎるが、歩き終えると身体と心がスッキリしていることが多い。
おそらく、心にアプローチしなくても、身体を整えて、動くことで、心が整うのは、深部感覚という身体の無意識の感覚の流れが充実して、自分の身体を所有しているという実感が、心に何かしらの影響を与えるのだと思う。心というものは、実体がなく、捉えどころのないものだから、私にとっては心にアプローチしなくてもよいということで、ストレスがなく助かる。深部感覚も目に見えない無意識の感覚の流れであるから、実体がなく、捉えどころがない。しかし、深部感覚は肉体の感覚であるから、身体の構造、仕組みを理解することで、身体という実態を感覚の指標にすることができる。そして、深部感覚が敏感になってきたかどうかは、自分が自分の身体を所有しているという感覚が明確になることで、それを実感できる。そして、所有感覚が明確になることで、自分が自分の身体をコントロールできるようになり、動きを観るということができるようになる。瞑想をしなくても心を整えることができるようになった参加者は、動きを観ることができるようになったのだといえる。
肩関節の運動と筋肉の作用についての検討、実習は、 先月の上肢帯の運動のつづき。肩関節の運動をサポートする方法で、肩関節の可動域が拡大することを実感した。深部感覚が鈍感になっている身体のパーツは、自分のパーツなのだけれども、自分がコントロールすることができない。肩のみならず、身体の深部感覚を敏感にし、機能的な姿勢を身に付けたい。
指先から身体を整える所有感覚メソッドは、ハムテンション( hamstring - tension)を実習した。
大腿の後方の筋肉には、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋がある。一般にこれらの筋肉をハムストリングスと総称している。 hamstringのhamはももの後側、豚のもも肉の塩漬けを燻製にしたもの、豚のもも肉の意味、stringは紐、弦、筋の意味。
▲日本人体解剖学 金子丑之助著
「作用」
動作をおこなうときは、ハムテンションをキープする。ハムテンションは、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋に偏りなくテンションをかけることが大切だ。しかし、テンションをかける以前に、ハムストリングスを偏りなく収縮させることが難しくなっている人が多い。そのような場合は、しゃがむことが苦手、膝痛や肉離れなどの故障、股関節の可動域が狭いなど、ハムストリングスが正常に機能しないことで問題が生じる。まずは、ハムストリングスの起始・停止、走行を身体で理解することが大切だ。
そして、ハムストリングスを偏りなく収縮できるようにする。動作におけるハムテンションにおいて、骨格ポジションは欠かせない。接地の質を高め、安定した支持脚の元に、骨盤前傾の可動域を拡大していくことが大切だ。
股割りは、足関節の底屈、背屈を実習した。股割り動作をするときは、股関節の外旋・外転をキープして、股関節を屈曲する。股割り動作で皆が苦戦しているのは、股関節の外旋をキープできないこと。股関節の外旋をキープできないと、股関節の屈曲とともに内旋して、股関節の細分化ができない。股関節の外旋をキープするためには、足の末端を自在にコントロールできることが必要だ。
足の関節には、距腿関節、距骨下関節、距踵舟関節、踵立方関節、楔舟関節、楔立方関節、足根中足関節、中足趾節関節、趾節間関節がある。いわゆる、足関節というのは、距腿関節を指す。距腿関節は、脛骨と腓骨の関節面が連なった関節窩と距骨滑車が関節頭となる、らせん関節という一軸性関節。足関節の底屈、背屈は、距骨滑車を偏りなく動かしていく。
▲解剖学アトラス 訳=越智淳三
足関節の底屈、背屈運動をおこなっているとき、本人が距骨滑車の偏った動きに気づかない。距腿関節の正規の運動ルートを身に付けることが股関節の細分化を図る上で重要だ。
足関節の筋肉の作用
足関節の底屈、背屈運動は、以上の筋肉が偏りなく、正常に作用することが大切だ。底屈時は、ふくらはぎの筋肉が力こぶになる。背屈時は、すねの筋肉が力こぶになる。筋肉に収縮がなく力こぶにならない場合は、運動の際、正常に筋肉が作用していない。距腿関節の正規の運動ルートを見直すことが大切だ。
足関節の底屈、背屈運動と股関節の運動を連動させる。
股関節の外旋をキープすること。
股割り動作で膝(膝蓋骨)が前を向いてしまう場合は、股関節が細分化されていない。股関節の外旋をキープして、膝(膝蓋骨)が上を向いている状態で股割り動作をできるようにしたい。
骨盤おこしは、 骨盤のニュートラルポジションを実習した。
骨盤の操作は、股関節でおこなう。股関節の骨指標は大腿骨大転子。確認をする際に、大転子を上前腸骨棘と間違えている人がいるので、それぞれの位置を確実に確認できるようにしたい。また、恥骨の感覚が鈍くなっていて、恥骨結節を確認できない人が多い。恥骨結節は坐骨結節とともにトライアングルベースを形成する骨指標なので、確認できるようにしておきたい。
骨指標の確認
1.上前腸骨棘
2.下前腸骨棘
3.上後腸骨棘
4.坐骨結節
5.恥骨結節
6.尾骨
7.大腿骨大転子
骨盤のニュートラルポジションにおける深部感覚
1.座位
2.四つ這い位