5月の構造動作トレーニング・東京教室「Takahiroラボ」は、運動の定義、身体の機能状態を正常にして円滑な重心移動のつづきで、上肢を細分化し、円滑な重心移動をおこなうための腕橈関節のメカニズムを検討、実習した。
構造動作トレーニングでは、「運動とは重心が移動すること」と定義し、円滑な重心移動をおこなうことができるよう、身体の機能状態を良好にし、基本動作を練っている。 今回は上肢の機能状態に注目してみた。四肢には、身体の体幹から突出して身体を支え移動させる働きがある。一般に、その役割は脚のイメージが強い。実際には腕にも支える役割があるが、倒立やプッシュアップでもしない限り、なかなかイメージし難いのではないだろうか。腕で身体を支えることが苦手という人が多い。その時の、腕の配置を確認してみると、手指骨、手根骨、尺骨・橈骨、上腕骨、鎖骨、肩甲骨が正しく配列されていない。
上肢骨の不揃いな配列は、円滑な動作を妨る原因となり、その後、腱鞘炎、ひじ痛、五十肩、腕の感覚の不一致などに発展するケースが少なくない。上腕骨の配置、手関節、腕橈関節、腕尺関節、上腕肩甲関節、胸鎖関節の運動方向を理解し、上肢と体幹の関係を身体で覚えることが大切だ。
「深部感覚」は、深部感覚からボディーをつなげるための深部感覚ルーティーンを実習した。
そもそも、深部感覚にアプローチするようになったのは、私が末梢神経を損傷して足が麻痺したときのリハビリだ。感覚を取り戻すため身体が求めていることに従っておこなったリハビリが、深部感覚ルーティーンの元になっている。実は健康な人でも深部感覚はにぶくなっている。深部感覚は意識に上がらない感覚の流れなので、健康な人は触覚や圧覚などの表在感覚から骨指標を基にアクティブで安定し強度のある基本ポジションを身に付けることで深部の感覚を養う。
深部感覚ルーティーンで大切なことは「感覚を拾う」ということ。ペアケア(ふたりでおこなう)でパートナーから「重さをかりる」ことで、「骨の丈夫な感覚」「骨の安定した感覚」を味わう。これをじっくり重さを感じ、安定感のある基本ポジションを身に付けていく。
深部感覚が養われることによって得られるメリットは、自分の動作を観られるようになることだ。深部感覚の重さや位置、運動の感覚を拾うことで、自分の動作を実感でき、感覚的に観ることができる。また、股割りやスクワットなどのトレーニング動作を自分の動作を通して観ることができ、トレーニングを効率よく効果的におこなうことができる。
身体の不調がなかなか治らない場合や故障を繰り返す場合などは、深部感覚が鈍くなっていることが考えられる。先日、身体の調整のための施術中に「水の中に足をいれているみたいで浮力が働いているように軽い」といった人がいた。推測だが、足の骨、筋肉、関節などに、施術者の徒手から何らかの感覚を拾ったのだろう、身体が不調のときは足が塊のように漠然としていたものがクリアになり、足と体液を感じるようになったのだろう。感覚、表現は個人で差があるが、私も「足に水が通る」感覚を経験したことがあるのでいい感覚であることは分かる。
5月の構造動作トレーニング・東京教室「股割り」は、 足の解剖を理解して、股割りを実習し、片脚動作の質を高めた。
股関節は寛骨臼と大腿骨頭との間にできる臼状関節だ。股関節は体幹と下肢をつなぐ関節で頑丈な靭帯で強化されている。靭帯には、大腿骨頭靭帯、輪帯、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯がある。その中でも、腸骨大腿靭帯は全身中最強の靭帯で股関節の前面を補強している。
▲日本人体解剖学 金子丑之助著
構造動作トレーニングでおこなう股割りは、純粋な股関節の可動域を拡大したい。そのため、筋肉をストレッチしない。これは、股関節に作用する筋肉にストレッチ入力がされ、最大筋収縮率が低下するのを避けるためと、股関節を補強する靭帯までも伸ばしきり、関節をルーズにしてしまわないためである。
股関節に作用する筋肉をストレッチしてしまうと、代償運動に陥りやすい。180度以上の開脚ができても、股関節をコントロールすることができない人は、代償運動による故障が絶えない。
純粋な股関節の可動域を拡大していくためには、足の骨、筋肉、関節運動、動作のメカニズムを理解し、股割りに取り組むことが大切だ。
純粋な股関節の可動域が拡大するのには、下肢の機能が連動しなければならない。開脚ができて柔軟性があるように見える人でも、下肢の機能が連動していない場合は、腰痛や膝痛などの不調がある人が多い。
股関節が、やわらければ良い、ということではなく、下肢の機能が連動するためのトレーニングをおこなうことが大切だ。
股割りをおこなうときの骨格ポジションは、骨盤のトライアングルベースを床に接触した体幹の位置をキープ、四肢は股関節の運動が体幹と連動する位置をキープする。股関節の可動域に左右差がある場合は、体幹と四肢の連動状態を見直すこと。
股割りで身に付けた純粋な股関節の可動域を動作に転換する。人が動作をおこなうとき、運動を円滑におこなえるベクトルがある。このベクトルを理解し、動作をおこなうこと。
片脚動作は、左右の股関節の切り返しを円滑にすること。競技動作に限らず、日常生活動作を故障なく、快適におこなう上で、純粋な股関節運動を身に付けたい。
5月の構造動作トレーニング・東京教室「骨盤おこし」は、四肢と体幹をつなげるための深部感覚ルーティーンを実習した。
深部感覚ルーティーンでは、重力を無理なく受けることができる骨格ポジションを脳に上書きして骨の位置を記憶する。骨格ポジションを決定するには、「骨で身体を支える」ことができるポジションへ、骨の形や位置を手触り、手応えなどの感覚を総合する。
骨盤は、坐骨結節と恥骨結節で結ぶトライアングルベースを指標とし、この面が座面と接触するポジションを目標にする。このポジションが保たれることのより股関節のフリーポジションから、いつでも動き出し可能になる。さらに、大腿骨と脛骨が垂直に並び足裏全体接地で下肢の骨格ポジションが整うことで身体を無理なく支えることができ、下肢の自由な動きを手に入れることができる。
長管骨は、重力が長軸方向へ向かう垂直位置に決定しセッティングする。長管骨は、重力を長軸方向に受ける垂直位置がもっとも強度を発揮する。逆に長管骨を傾けた位置では、剪断力という力がかかり、壊れやすく、また骨の役割を果たすことができない。骨の役割は、身体を支えること。骨の役割を果たすことができなくなると、筋肉や靭帯などが、それらの役割を余分に受け持つことになり、共に負担がかかる。骨格は、形の異なる骨が集合して形成される。それぞれの骨の形状を知り、重力を無理なく受けることができる骨の位置を身体で理解することが必要だ。
身体を構成する多種多様な関節の組み合わせは、自在な運動を可能にする。自在というのは「思うまま」という意味だが、一定の条件のもとで運動が成立するので、法則から外れる場合は、スムーズな運動が成立しない。この場合の法則とは、人が生来もっている動きの本質であり、ものごとの相互関係のこと。
四肢は体幹とつながり、体幹から動く。腕は胸から動く構造になっていて、脚はお尻から動く構造になっている。つまり、手足は体幹から動く構造になっている。
深部感覚の入力とは、触圧覚、視覚などから骨の位置を決定し、自分の重さを加え、骨の位置を維持するために、自らの運動で内部に生じる刺激を感知し、感覚にすること。
各関節は常に遊びを保ちつつ、身体につながりのある状態が理想。自分の腕と脚の関節の状態を把握し、深部感覚ルーティーンをすすめることが大切。それは、トレーニングの効果に直結する。
四肢は自在な運動をし、体幹はお腹が充実し、深い呼吸ができる身体の状態をあたりまえにしたい。