構造動作トレーニング・東京教室をはじめて、まるっと13年たった。2008年の東京・骨盤おこしセミナーからはじまり、世話役の動作術・中島章夫先生には大変お世話になり、感謝しています。
6月の構造動作トレーニング・東京教室は、【技アリ企画】構造動作トレーニング1 「Takahiro ラボ」、【技アリ企画】構造動作トレーニング2 「指先から身体を整える ── 機能回復のための所有感覚メソッド 」、【技アリ企画】構造動作トレーニング3 「“超”スムーズな動きを作る ? 股割り入門教室」、【技アリ企画】構造動作トレーニング4 「『骨盤おこしトレーニング』── 快適動作のための股関節回転講座」の4講座をおこなった。
構造動作トレーニングは、快適な動作をおこなえるようにするために、運動と感覚が循環する身体づくりをおこなう。そのためには、重心移動を円滑におこなうことができる骨格ポジションを求め、最小限の筋力で移動できる関節運動の方向を身に付けることが必要だ。肩こり、腰痛、膝痛など、身体に不具合がある場合や、自分の身体を思うようにコントロールすることができないなどの不調がある場合は、運動と感覚が上手く循環していない何かしらの原因がある。まずは、身体を理解することからはじめ、運動と感覚の関わりを少しづつ実感していきたい。
快適な動作をおこなえるようにするためには、身体を良好な状態に整えておきたい。規則正しい生活を心がけ、身体の疲労が抜けやすい状態が望ましい。最近は仕事が忙しく疲れが取れない、とデスクワークをされている方がいっていた。食事は気を付けているが、運動不足と良質な睡眠がとれていないようだった。一日中、座り姿勢で身体が固まってしまうので、歩くこと、身体を整えてから就寝することで良質な睡眠をとることが大切だ。
構造動作トレーニングで身に付けていく姿勢は、機能的肢位という、すぐさま移動でき、骨格の強度と安定を備えた姿勢だ。骨指標を基に、骨格の位置をより良好なポジションに上書きしていくことが大切だ。深部感覚が薄い段階では、姿勢を崩しやすいが、良好なポジションを重ねていくことで、力感が薄れ、深部感覚の濃度が高まり、姿勢を維持しやすくなる。
機能的肢位において、重心移動を円滑におこなえるように、関節運動の方向を、より自由度の高い運動ができる方向を求める。構造動作トレーニングに基ずく股割りやスクワットなどは、関節の自由度を求めるのに適している運動だ。重心移動を実感し、円滑におこなえるようにしていくのには、構造動作トレーニングに基ずく、歩行動作やロウギアランニングが適している。競技動作に転換していく場合は、重心移動を実感することが大切だ。
重心移動を実感するのに、股関節の自由度が高ければ、高いほど実感はしやすい。股関節の自由度とは、自分がコントロールできる関節可動域であり、一定の関節角度を保つことができる、ということでない。例えば、股関節の外旋位は保つことができるが、動作の中で股関節の外旋ができない、というのは股関節の自由度が低い。この違いは、構造動作トレーニングに基ずく股割りで実感することができる。
身体をコントロールし、もっとシンプルに動作ができるようにしたい。例えば、胸鎖関節を動かすのに、肩に奇妙な生き物を飼っているかのごとく、動作を複雑にしている場合がある。肩甲骨は筋肉に包まれているので、肩甲骨の意識は筋肉の意識になりやすいく、腕の動きを複雑にしてしまう傾向にある。腕をシンプルにコントロールするのには胸鎖関節を意識する方がよい。シンプルに身体をコントロールして動作ができるようにするためには、身体の骨指標を明確にしておくことが大切だ。
構造動作トレーニングを今後ともよろしくお願いします!
6月の構造動作トレーニング・東京教室「股割り」は、股関節の自由度を高めるため、四肢と体幹をつなげるポイントをおさらいした。股関節の自由度を高めるとは、自分がコントロールできる股関節の可動域を拡大すること。そして、さらに股関節に作用する筋肉を筋線維レベルで細かく使えるようにしていく。
身体的パフォーマンスに優れた人というのは、軽快な足捌きの上に安定した姿勢を乗せているようで、重心移動が滑らかだ。それは、全身の筋肉や関節を細かく使うことができるから。それでも、どんなに優れた人でも完璧に全身の筋肉や関節を細かく使うことはできない。それは、競技の特徴や利き腕など、良く使う動きと使わない動きが身体の中に定着することが要因だと考える。
パフォーマンスが思うように上がらない場合や身体が故障してしまう場合などは、筋肉や関節が細かく使えていない箇所が全身のどこかにある。肩の力を抜いてリラックスしたとしても、あるいは、ストレッチをして身体を柔軟にしたとしても、筋肉や関節が細かく使えていない箇所が変わらなければパフォーマンスは上がらない。技術的な身体の使い方が熟練していたとしても、全身の筋肉や関節が細かく使えていないことが多い。
股割りは、股関節を視点にすると、外転、外旋、屈曲の運動だが、体幹を視点にすると前屈運動だ。それにともない、肩関節の屈曲運動が加わる。股割り動作は、外観の姿勢や動作だけでなく、内観の骨、関節、筋肉を全身で観察しおこなうことが大切だ。
牧神の蹄に足の指を合わせるときは、縁に末節骨を捉える。これは、指先から足関節、膝関節、股関節、しいては全身に筋肉と関節のつながりをもたせるため。
O脚やX脚の足の並びでは、股関節の自由度が高まらない。足のアライメントが崩れることも、良く使う動きと使わない動きが身体の中に定着した結果だと考える。私自身も柔道をやっていたころの故障や足の使い方が重なって、未だ定着している箇所が気になるが、それでも少しはアライメントがマシになってきたので、股関節の可動域が拡大した実感がある。
股関節を意識できる場合は、股関節の位置、関節運動の方向が明確になっている状態。まずは、骨指標である大腿骨の大転子を触察でクリアにすることが大切だ。これらが、明確でないうちは股関節の意識は筋肉の意識になり、良く使う筋肉と使わない筋肉を定着させる可能性が高まるので注意。
股割りの東京タワーやマウント富士のポーズは、身体の重心を整えるもの。せっかく中間重心にセットしても、上腕と体幹につながりがないと後重心に戻ってしまい姿勢を保持することができない。股関節と同様に腕橈関節、胸鎖関節を明確にしておくことが大切だ。
股割りをするときは、骨盤のトライアングルベースが畳に接触するポジションからスタートする。骨盤を立てることができない段階では、脚の筋肉や関節を細かく使うことができてないことが多い。骨盤だけに捉われず全身の状態を把握することが大切だ。
股割りをスタートするときの姿勢は、股関節を外旋、外転位でキープ、骨盤、胸郭、頭蓋骨を並べ、手掌を畳に接触する。このとき、肩が挙がってしまう人が多い。これは、体幹を保持するための脊柱起立筋が正しく作用していないためだ。なかなか難しい姿勢だが、円滑な重心移動をおこなうためには、それに見合う姿勢が必要だ。
股割りは技術的な動作でなく、純粋な股関節の運動だ。元々の身体の状態をより良好な状態にすることで、競技動作や技術的な動作を熟練したい。そして、さらに股関節に作用する筋肉を筋線維レベルで細かく使えるようにし、磨いていきたい。
6月の構造動作トレーニング・東京教室「所有感覚」は、深部感覚から四肢とボディーをつなげ身体を整えるための深部感覚ルーティーンを実習した。
講座や治療院に訪れる人たちをみていると、足が変形しい外反母趾になっている人の割合が高い。足の親指が酷く変形していても、まったく痛みがない、あるいは、少し変形がはじまったくらいの状態でものすごく痛みがあるなど、個人差が大きい。
外反母趾になるまで、足の親指はどのような経緯をへて変形してしまうのか?本来、5本の足の指から踵までの足裏全体で身体の加重を受けるはずの足の接地が、母趾球に偏って加重を受け、衝撃の蓄積で変形が強くなる。筋肉や関節の使い方にも影響をあたえ、良く使うものと使わないものの差が生まれ、全身に捻じれが生じている場合が多い。
構造動作トレーニングに基ずく股割りで股関節の可動域を拡大しようとしても、筋肉や関節の使い方に偏りがあり、全身に捻じれが生じていると、股関節をコントロールできず可動域を拡大することが難しい。全身の筋肉や関節の捻じれというのは、専門家から見れば表面化していても、内面の捻じれは自覚しにくく、自分で治すことは困難だ。自分でできることは、外反母趾や身体の捻じれの予防をすることが大切だ。
足の親指が外反母趾に変形している人は、足首、膝、股関節、腰、背中、手首、肘、肩、首、顎など、複数の症状を訴えることが多い。それは、身体に捻じれをつくっていることが要因だと考える。激しい運動をする競技選手では、接地のときの衝撃が母趾球から全身に波及するので、ダメージがきつい。
身体に複数の不具合の箇所があるのなら、身体の内面に捻じれがあることを想定した方がよい。すでに外反母趾になっているのであれば、これ以上進行しない予防、身体の内面に潜在する捻じれが想定させるのであれば、これ以上、捻じれを増長させないための予防が必要だ。
予防方法は、現状でできる可能な限り正しい深部感覚の情報を入力し、上書きすることだ。深部感覚というものが理解できないうちは、上書きを重ね、理解を深める。身体の内面の潜在的な捻じれは、深部感覚で気付くことができる。私自身、30年前に足の親指を疲労骨折した後遺症による捻じれは、深部感覚を実感したことで気づいた。この気づきは足を施術するのに役立っている。
深部感覚が正しく入力されると、身体の感覚に良い変化がある。個人差があり、表現方法は異なっても、良い変化は実感できるもの。良い変化を重ねることが大切だ。
6月の構造動作トレーニング・東京教室「Takahiroラボ」に、半年ぶりくらいに訪れた参加者さんが、姿勢を崩していたので、姿勢を整えるポイントをおさらいをした。
構造動作トレーニングでは、機能的肢位を身に付けることを目的としている。一般には解剖学的肢位が正しい姿勢とされているが、重心移動を円滑にし、快適に動作をおこなうためには、機能的肢位が向いていると考えている。
機能的肢位は、骨格がもつ強度を最大限に発揮できるポジションを求め、姿勢を安定させる。その肢位は、速やかに次の動作へ移動できる姿勢でもある。快適に動作をおこなうためには、強度と安定を備えた姿勢が欠かせない。
姿勢の強度と安定は、筋肉で頑張ることではなく、多種多様な骨の形状が強度を発揮できる位置に骨格を配列することで得ることができる。機能的肢位は、「骨で立つ」と表現されることが多い。骨で立つ、ということがイメージはできても、具体的な感覚がなければ、身に付けることが難しい。構造動作トレーニングでは、骨指標をもとに具体的な感覚を得ることで、深部感覚を高め、外観の姿勢に留まらず、内観の姿勢をつくっていく。機能的肢位は姿勢の内側が重要なのだ。
機能的肢位は、速やかに次の動作へ移動できる姿勢であり、動作とともに姿勢づくりをする必要がある。機能的肢位をいいかえると、円滑な重心移動が可能な立ち方ともいえる。これは、見た目の姿勢だけを求めるのでなく、快適な動作とイコールにならなければならない。円滑な重心移動が可能な立ち方は、簡単に身に付く姿勢ではないので、骨格の解剖学的構造、強度を発揮する骨の方向、円滑な重心移動、接地の方法などを理解し、機能低下のみられる身体の箇所は、すみやかに回復し、良質なトレーニングを心がけることが大切だ。