11月の東京セミナーは、体調管理のためマスク着用で臨んだ。声がしっかり聞き取れているか受講生の方に確認をとりながら講義を進めた。いつものドギツイ名古屋弁がオブラートにつつまれてやわらかな尾張弁だったのではなかと、その効果に驚いている。たまにはマスクもいいかもしれない。27日のTakahiroラボでやった「重さの調節」という考え方はとても大切だと振り返っている。感覚やカラダを支えるレベルというのは人それぞれ、オーダーメイドの重さから始めるのがベスト。
28日、午前中はNHK青山教室で第2回目の「骨格ポジショニング」。受講生の方に1回目の講義を受けて何か変化があったかどうかを問う。授業中に肩や首が痛くて辛くなると訴えていた学生さんが痛くなくなりましたと、また膝が痛いと訴えていた主婦の方が痛みがなくなりましたとの報告。もちろん受講者の皆さんが講義で実習したことを日常生活で注意深く探った賜であるがとてもうれしい。
午後は技アリ企画「股関節なめらかトレーニング」「趾レベルアップ」「股割りモアチャレンジ」のフルコース。今回は趾でヒートアップ。かなり効果的だったのか、つづく股割りがどんよりとしていた。しかし、股割り英会話で笑顔を取り戻し、新たなる股割りフランス語講座で復活!教授、さんきう。
カラダの硬い理由を「もともと」「年も年だから」と思い込んでいる方が多い。足を大きく開脚しようにも骨盤が後傾、内転筋がつっぱって、とてもじゃないが無理、これは「年も年だから股関節が硬い」ということになる。しかし、それが股関節をコントロールできないことの理由にはならない。そもそも「足を大きく開脚する」というのは、股関節をコントロールできるか、できないか、という話。股関節が硬いことが理由ならば、股関節をやわらかくするためにマッサージやストレッチなどを施せばコントロールできるようになるということになるが、運動感覚があがらないままでは何も変わらない。「カラダが硬い」「股関節が硬い」というのは、カラダ・股関節をコントロールできないために、そのような状態になっていることに気づくことが重要だ。
逆にカラダがやわらかければ何の問題もないだろうと考えがち。実は、カラダがやわらかければ股関節をコントロールできると思われるかもしれないが、コントロールできない人の方が圧倒的に多いのだ。これは、本人たちが口をそろえて「股関節を動かせれるようになりたい」という。硬い人たちには想像がつかない世界なのだと思う。専門家でさえ「やわらかければよい」と考えている人が多いので、知識も経験もない一般の方たちが思い込みの呪縛から逃れられないのも仕方のないことなのかもしれない。
股関節の伸展動作というのは、長趾屈筋、長母趾屈筋、後脛骨筋、ハムストリングス、外旋六筋、広背筋、脊柱起立筋などの筋肉が連動した状態を練習する。これらの筋肉が連動することにより動きにキレが増すのだ。しかし、股関節の伸展動作を練習していると後脛骨筋や広背筋が抜ける、抜ける。指摘を受けて注意深く意識をするものの意識が届かずに再び抜ける。これは、骨格筋が連動するための機能状況に達してないことが大きな原因だ。個々の筋肉の回復をすすめつつ連動性を持たせることが大切だ。牧神の蹄は、骨格筋の巧緻性に加え連動性の手助けに効果的。
私は動きをリードする治療士に必要なことが「アタッカーを兼ねるヒーラー」であることだと考えている。それは、状況にあわせた適刺激の確保で相手の回復を助けることだ。並みのセラピストにはでききない回復技を打てるようになるためには、日々の鍛練を怠ってはいけない。グラウンドテクニックの要は体の入れ替え。決して、ターゲットを見失わないポジション取りを可能にしなければならない。そして、相手の回復を見定めて、次なるターゲットにすぐさま移行できるテックニックが大切だ。
同じような怪我をした経験があれば相手を励ますことができる。同じような怪我を克服した経験があれば復活の手助けができる。もし、復活の手助けができないことで悩んでいるのなら、まずは他人のことよりも自分が克服すべき。そして、相手の動きがわからないのならば、まずは自分が動きを経験すべきだ。以下は、動きを練りづづけている指導者の股関節感覚です。
昨日の股割り稽古会、大腿骨の内旋が起こらないようにすると、あるところから一ミリも前に動けなくなる。体幹を変形させたり、腕だけを伸ばして前に進んだような気になることも、厳しくチェックされ、もうどうしてよいのかわからないところまで追い込まれる。中村先生に誘導していただくが 、高いところに昇って降りられなくなってしまった子供のように、さしのべてもらった手に体が抵抗する。「今まで何をやって来たのか」という思いが頭をよぎったときに 、まさに同じ言葉で叱咤される。それでも諦めきれず、動こうともがく。尻の中で、これまで意識したことのなかった筋肉がヒクヒクとし始める、数センチ前進。 そのポジションで腹圧をかけてみる。股の間に腹がするりと収まる感覚。苦しみの中に 、それとは独立した快感が生まれる。
最近、骨盤の形や股関節の形が以前よりははっきりと意識できるようになってきたので、上達してきたかなと思ったが、とんでもない思い上がりだった。骨には筋肉がついている。その筋肉を使わずして骨格を思うように操作できるわけはない。それに気づかされた特訓であった。
(おわび)中村先生、中島先生、参加者の皆さま、一人で時間をとってしまって申し訳ありませんでした。