接触技術を無効化する

「接触技術を無効化」フィルターを外したところでヒトの動きをみる

私が治療やトレーニングで気を付けていることは、「動き」をみること。その人の「動き」をみれば大方、カラダの状態がわかる。そして、治療やトレーニングが進行して、ある程度のカラダの機能状態に回復したら、各パーツの機能のつながりをみるために、実際に「動き」に触れてみる。「動き」というのは、その人の機能状態に相応するベースにあたるものと、それを補うための技術的なもの、癖のようなもの、精神的なものなどが交じり合っている。目で見てわかる「動き」は、技術的なもの、癖のようなものに騙されることがある。私はその人の機能状態の回復をみているので、それらのフィルターを取り除いたところで治療やトレーニングをすすめていかなければならない。

個人指導やパーソナルでみる「代償運動」

治療やトレーニングである程度のカラダの機能状態に回復したとみられても、技術、癖などでベースを補っていることがよくある。私もこれにはよく騙され、フィルターを取り除くことにずいぶん苦労した。このような「代償運動」に気づかないままでは、再発する可能性が高く、或いは、パフォーマンスが上がらないということにつながる。

例えば、「接触」という技術

バット、ラケット、竹刀などを握る、持つということは、物に手が接触するということ。この接触の仕方には、手の機能によるもの、技術的なもの、癖のようなものが少なからず交じり合っている。先日、武術の技を研究している中島章夫先生やたいさんの手と接触したときは、熟練した接触技術が際立っていた。フィルターを取り除くというのは、技術、癖などを除外して手の機能そのものをみるということになる。しかし、長年、競技や武術で培った技術というのは、その競技の素人の私が容易に取り除けるものではない。そうかといって、治療やトレーニングで気付かないまま、取り除けないでいたとしたら、カラダの機能状態を回復することは難しくなる。だから、技術力の高い人というのは往々にしてカラダに故障がみられる。

がっぷり四つに組んだところからはじめる

フィルターを取り除くために私が出した打開策は、「がっぷり四つに組む」こと。私がみる「動き」は、いたってシンプルにその人の機能状態に相応するもの。簡単にいうとヒトの基本動作をみている。がっぷり四つに組んで、その人の基本動作に触れることで、ある程度の技術や癖を外したところで「動き」をみることができる。とはいえ、がっぷり四つに組んだとしても熟練の技術力、強力な癖の方が勝る。そのような強力なフィルターを無効化するためには、こちらにそれに見合うだけの「基本動作力」が必要になる。逆にこちらに高い「技術力」があって「基本動作力」が未熟だとしたら、その人の技術、癖などをベースの動きと混じり合わせたままの「動き」として捉えてしまう可能性が高い。それは、「動き」というものの成り立ちを知らないまま、ヒトの機能状態の回復過程と異なる方向へ導いてしまうことが考えられる。治療士も「基本動作力」が欠かせない。

技術力の高い人に必要な基本動作

各競技で活躍している人というのは、技術力が高い。それでも故障に見舞われたり、パフォーマンスが振るわないという場合は、ベースの動きが技術力に見合わないか、強力な癖が際立っているか、精神的に「不安」要素をかかえていることが考えられる。私は、個人指導やパーソナルで「基本動作」を徹底する。それは、ベースの動きを引き上げることで動作が滑らかになり、癖や不安が薄れやすいから。その際、動きに触れ、重さや力の伝わり方を確かめる。動きは画像に映し出せば重心移動の軌道を描き、触れれば重さや力として伝わり感じることができる。画像は、目安になるが、実際の動きを構成するものを知るまでに至らない。実際に触ってみるのが百聞は一見に如かずという。実際に重さや力の伝わり方から動きの流れを追跡する。技術力の高い人というのは、カラダの成りに動いているつもりでも無意識に「技」を駆使して動きの流れをつくる傾向にある。それは、画像ではなく、動きに触れることで、はじめてわかることが多い。基本動作に徹底する理由は無意識をカラダの成りに動けるようにすることで技術力の効率化を図るためでもある。無意識とはいえ、技術力が動きに散らばることで、それが「代償運動」になりカラダへの負担が大きい。

動きの流れを追跡する

動きに触れることで動きの流れを追跡することができる。それは、動きの流れの滞り、漏れ、逆流など感知することができる。何の迷いもなく本筋を流れる動きは、その動作においてカラダの機能状態が充実している。しかし、仮に動きの流れが滞っていたとしても、それが人ということなのかもしれない。きっと、完璧に動ける人などいないのだと思う。そして、必要ならば自問自答し迷いを振り払えばよいのではないだろうか。動きはカラダのベース、技術、癖、精神など、実に多くの要素から成り立っている。その中でも指標が多いカラダのベースになる動きに注目することをおすすめする。それは、指標になりうるものが少ない要素に注目してしまうと迷宮に迷い込む可能性が高いから。まず、もっとも身近にありながら、もっともコントロールが利かないカラダの機能回復から入るのが妥当だと思う。

技術力を無効化する方法

これは、今後も私の課題として基本動作力を高めながらもっと勉強が必要。どうすれば治るのか、どうすればパフォーマンスアップに見合うカラダの機能状態を得ることができるのか、とうのは大方、その人の動きをみればわかるようになった。そして目的を達成するためには、その人が攻めの姿勢で臨むことが条件にある。しかし、技術力や癖などのフィルターが想像以上に頑固な場合は、こちらにもかなりの用意がいる。少し言い方が悪くなるが、このようなカラダの状態は嘘を付き、動きは騙そうとする。これらを無効化するためには、私がそれ以上の嘘と騙しが出来ればいい。だが、私の性格からしてそれは無理。鍛錬に励み基本動作を練り上げ、正々堂々と中央突破。もっともオーソドックスな方法だがきっと伝わることが大きいと思う。

 

 


 
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