無重力と重力の深部感覚/宇宙飛行士の体の変化から得られること
2016-10-12
私は12年前の大怪我で言葉にならない不思議な体験をした。これはミクロコスモス(小宇宙)体験というと何となくかっこいい。宇宙飛行士さんの本物の宇宙体験とは違うけれど私はそのように理解している。マクロコスモス(大宇宙)はロケットにのって地球を飛び出さなければ体験できないが、ミクロコスモス(小宇宙)ならいつも自分の中にあるものと思うようになった。九死に一生を得るような体験をされて人生観が変わったという方などは、ミクロコスモス(小宇宙)を体験したのではないかと解釈している。
宇宙飛行士さんから学ぶ
宇宙飛行士さんの中には宇宙から青い地球をみて人生観が変わるという。人類が宇宙に飛び出して50年くらいになるのだろうか。過酷な努力の結果が一握りの人間に青い地球という人生観を与える。彼らのおかげで地球に住む私たちのものの見方にも大きな指標になっているのだと思う。
無重力
地球には重力が働いて二足歩行の人類には負担になっているという考え方がある。しかし、無重力という環境はそれ以上に過酷なのではないだろうか。無重力環境では体液の流れの変化、骨筋の衰え、など人の体に様々な変化が起こる。それ故に宇宙飛行士は地上にいるときよりも入念な体調管理がなされている。それでも地球に帰還したときには二本の足で立てないほどに衰えたかのように見える。重力の負担から解放されたいと思っている方はどうなってしまうのだろうか。
地球上の生物は重力下において進化してきた。私たち人間の体も重力下で生活を営むための設計がされているのだと思う。重力という適度な刺激があるからこそ私たちは二足歩行で生活を営むことができる。これができなくなったときに私たちは地球に引かれて土に帰るのではないか。
無重力環境に適応するということは地球人から宇宙人に進化するということなのかもしれない。しかし、本当のところ私たち人類は重力環境についてまだよくわかってない。中には重力の大きさを知る感覚(深部感覚・固有感覚)が鋭い人もいると思うが、そのほとんどは深部感覚を覚醒できないか、鈍らせている。人類が無重力環境という体験を重ねていくことで重力環境についての理解が深まっていくのかもしれない。
無重力と深部感覚
無重力環境では深部感覚の重量覚が必要なくなる。おそらく四肢の位置覚や運動覚などもさほど必要がなくなるのではないかと思う。地上における姿勢制御は視覚、前庭感覚、深部感覚などにより調節されている。重力環境ではこれら深部感覚(固有感覚)がなければ二足歩行で快適に生活を営むことができくなるだろう。
筋肉を強化することを目的にウエイトトレーニングに集中しすぎバランス感覚を鈍らせている方がある。重力を受けているという感覚があまりないのかもしれない。構造動作トレーニングでは重力を骨格で無理なく受けるため骨の強度を最大限に活かしたいと考えている。骨が体を支えるという本来の役割を果たすことで、筋肉は骨格の位置や運動の調整などパワーばかりでなく繊細な動きまで幅広い役割を担うことができる。筋肉をパワーに偏らせてしまうとバランス感覚を鈍らせる原因となると考えられる。
また、バランス感覚は視覚、前庭感覚、深部感覚などの姿勢制御がその精度の元にある。姿勢は「安定」「強度」「ただちに次の動作へ移ることができる」の3つのポイントを備えた骨格と重力の方向を体に染み込ませることで深部感覚(固有感覚)が高まる。バランス感覚は視覚、前庭感覚が注目されるが、深部感覚は欠かせないのだ。
無重力の体の変化は重力がヒトの体にとって必要不可欠であることを示唆しているのではないだろうか。