一流打者は手にマメができない:手の「接触」技術
手はバットやラケット、相手の手など様々なものに接触することができる。この接触の仕方により物がカラダの一部になり、また相手との一体感が生まれる。逆に雑な接触の仕方により、物と手との間の摩擦がマメを破り、また相手との不一致感を生じさせる。
相手を誘導する手の接触技術
先日、ダンスの中井理惠先生と手合わせをした。理惠先生がチャーミングだからという理由ではないが、とてもやさしい手の接触。これは武術の技を研究している中島章夫先生やたいさんのやさしい手の接触と質が違う。武術の技が相手を崩すのに対し、理惠先生は相手が崩れないように誘導する手の接触。以前、理惠先生にダンスを習ったときのこと、初心者の私を曲に合わせて心地よく誘導してくれた。似たような手の接触でも、その中身は全く別の技術をやっていることがよくわかる。この感覚は実際に両者を受け比べてみるとわかる人にはわかると思う。中井理惠先生も中島先生やたいさんと同様に構造動作トレーニングでカラダの基本を練っており、骨盤おこしトレーナーでもある。リズム音痴の私でさえもダンスの世界に連れて行ってくれるほどなので、一度体験してみるといいだろう。また違った感覚を体験することができ勉強になると思う。
- 中井理惠先生:ダンスジャルダン≫≫
- 中島章夫先生:動作術の会≫≫
- たいさん:武術稽古とかのブログ≫≫
この中でたいさんとコンタクトを取るのが難しいかも。彼は、それだけの実力を持ちながら自分が指導をするということをしてない。それは、本業があり仕事ができる人だから忙しい。とはいえ、さすがに時間の使い方が尋常でないほどすごい。彼のブログを参考に出没場所を探ってください。
たいさんのレポート:構造動作トレーニング『重さを乗せるスクワット』
技術がないならないなりの技の無効化
彼らには、カラダの基本構造を踏まえた上でのダンスや武術の技術がある。それゆえに、技の技術は確かなもの。それに比べ、私はカラダの基本構造を練ることに突き進むばかりで、動きのための接触技術は未熟だといえる。しかし、技術がないからこそ両者がよくわかり、カラダの基本構造を練ることに突き進む強みがある。これは、いずれ直球勝負、押し相撲のように立派な技術になりうると考えている。とはいえ、私は技術というフィルターを除いたところで、ヒトの動きをみていかなければならない。いずれ、技術になるのだとしても今、目の前にいる人の動きに触れなければならないことから骨と骨を合わせる接触で対応している。そうすることで指先、手の筋肉の動きを最小限にし、技術と関係なくフィルターを外すことができる。
ダイレクトに伝わるその人が持つ基本動作
私は多くの人たちのスクワット(しゃがむ)動作に触れている。人によりしゃがむ動作も十人十色。動きに長けた人は滑らかにしゃがみ、故障が多い人や動きがぎこちない人はしゃがむことが苦手。筋肉に利かせるためにスクワットをやっている人、呼吸を工夫しながらスクワットをやっている人。健康のため、パフォーマンスアップのためなど方法も目的も様々。私がみているスクワットというのは運動方向へカラダの機能的に重心が移動する動作。本当は、様々な方法や目的の前に備えておきたい基本動作がスクワットだと思っている。この基本動作を備えていないがために「しゃがむ」というもっともシンプルな動作を複雑にしてしまう。フィルターを外してスクワットという動きに触れてみると、その人が持つ基本動作がダイレクトに伝わってくる。
- 四肢と体幹のつながりが薄い
- 運動方向とは逆へ重心を移動させる
- 筋力の強さで左右差をつくる
これらは、ケガの原因、滑らかな動作を妨げるなどウィークポイントになっていることが多い。
基本動作はやらなければできるようにならない
いくら技術を駆使して動きを伝えようとしても、基本動作の動きの質とは別物。基本動作の熟練度は、動きに「重さ、鋭さ、キレ」といった付加価値をつける。技術で補う動きには深みがなくカラダに負荷をかける。特に股割り(開脚前屈)のような基本動作は技術を駆使したところでできるものではない。形を真似て一見できているようにみえたとしても動きの伝わらない開脚前屈ということがよくある。基本動作を練っている人なら、やわらかくなりたいことと、滑らかな動きになりたいことは別のことだと理解できるが、基本動作をやっていない人にはどちらも同じにみえる。これも私が動きに触れて動きの伝わり方を示すのだが、スクワット動作以上にカラダの機能を回復させなければ動きを伝えようにもその術がない。
物を扱う人はカラダと一体に動きを伝えれるように
「一流打者は手にマメができない」といわれる。同じように物を扱ったとしても物と手の接触、動くときの姿勢は個人差が大きい。構造動作トレーニングでみているブレーキが多い人は物と手との間で摩擦が生じやすい傾向にある。物を扱うということは手先だけの技術として捉えがちだが、カラダ全体で捉えた方が物の扱いが上手くいく。基本動作で動きを伝えることができるということは、物とカラダが一体になって動きを伝えることにつながる。技術はあるけれど故障が絶えないという人は手の平のマメ、硬さ、ガサガサなどを目安にしてみるとよい。やわらかく綺麗な手が摩擦の少ない手ということになる。